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東野圭吾の小説『白夜行』(集英社文庫)を読み終えた読者の中には、作品に強烈な不快感を覚えたという声が少なくありません。中でも、雪穂がサイコパスのように描かれている点や、登場人物たちのひどい行動の数々に心がざわついたという意見が目立ちます。
物語のあらすじを追うだけでは捉えきれない複雑な心理描写や、なぜここまで読者を動揺させるのかといった問いが浮かび上がることも多いでしょう。
さらに、亮司がかわいそうと感じる一方で、巻き込まれる登場人物たちへの共感も拭えません。そして最後一文に込められた意味が、読後の印象をさらに深いものにしています。
この記事では、白夜行 気持ち悪いというキーワードで作品に疑問を抱いた方に向けて、登場人物や構成、評価の背景を丁寧にひも解いていきます。
この記事を読むことで理解できること
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白夜行 気持ち悪いと感じる理由とは
引用:Amazon
雪穂 サイコパスという見方の是非
雪穂の行動や心理描写には、サイコパスという言葉がたびたび重ねられます。感情の起伏が表に出ず、表面上は完璧で魅力的な女性として描かれていますが、その裏には冷酷さや操作性が垣間見えます。
彼女が目的のために人を利用し、時には不幸に陥れる様子からは、人間味のなさや異質性を感じ取る読者も多いでしょう。特に、感情を動かすべき場面で一切揺るがない描写が続くことで、読者は彼女の本心が見えず、不気味さを募らせます。
一方で、彼女の過去に起きた悲劇的な出来事が行動の原点となっていることも無視できません。サイコパスと断定するのではなく、彼女の背景を踏まえたうえで、読者が抱く不快感の正体を探ることが大切です。
登場人物の行動がひどいと話題に
白夜行の登場人物たちは、いずれも倫理や常識から大きく逸脱した行動をとります。特に、亮司と雪穂が直接的、あるいは間接的に関与する事件の数々は、周囲の人間に甚大な被害をもたらしていきます。
レイプ未遂や詐欺、殺人までもが描かれ、それに巻き込まれた人物たちの苦しみが生々しく記述されます。江利子や今枝、美佳といった被害者たちは、それぞれが重大な心の傷を抱えることになり、読者の感情を強く揺さぶります。
物語を通じて、このようなひどい出来事が積み重なることで、読者は次第に「登場人物が信じられない」「誰も救われていない」という感覚を覚え、作品全体に対する嫌悪感や不安を抱くようになるのです。
重厚なあらすじから見える闇の構造
白夜行のあらすじは1973年から1992年にわたる19年間という長い時間軸を舞台に展開されます。物語はある殺人事件から始まり、被害者と加害者の子どもである亮司と雪穂が、まるで交わらないかのように別々の道を進んでいきます。
しかし、読み進めるうちに2人の背後には常に不可解な事件や不自然な死があり、それが点として浮かび上がっていくのです。直接的な接点が描かれないにもかかわらず、2人が共犯である可能性がほのめかされ、読者は想像力を掻き立てられながら物語にのめり込んでいきます。
この構造は極めて巧妙である一方で、読者によっては「気持ち悪い」と感じさせる要因となっています。目に見えない関係性が暗示され続けることで、得体の知れない不穏さが物語を包み込んでいくのです。
物語の根底にあるのはなぜ不快感か
白夜行が読者に強烈な不快感を与える要因の一つは、「悪」が裁かれないまま進行する構成にあります。登場人物が次々と不幸に見舞われ、救いが一切提示されない世界観は、読者にとって居心地の悪さを感じさせます。
さらに、登場人物たちの心情が詳細に描かれない点も、読者にとっての想像の余地を広げると同時に、不安を掻き立てる要因となります。感情移入すべき対象がいない物語は、読後に虚無感や無力感を残す場合もあります。
なぜここまで徹底して光を排除した作品が多くの読者に受け入れられているのか。この疑問こそが、作品の本質に迫るための鍵と言えるでしょう。
亮司 かわいそうという声がある理由
亮司に対してかわいそうという印象を持つ読者も少なくありません。彼の行動の原点には、父親の暴力や家庭環境による心の傷があり、それが彼の人生の選択に大きく影響しています。
また、物語を通じて亮司が雪穂のために行動していると思わせる描写が随所に存在します。犯罪に手を染めながらも、自分の存在を裏から支える役割に徹する姿勢には、哀しみや献身といった感情を重ねることができます。
ただし、同時に彼の行動は多くの人々を不幸にしており、その矛盾が読者に複雑な感情を抱かせます。彼の悲劇性が際立つほど、彼がかわいそうであるという認識もまた、強まっていくのです。
なぜ白夜行が気持ち悪いと感じるのかを考察
ラストに込められた最後の一文の意味
白夜行のラストに登場する最後一文は、作品全体の雰囲気を象徴するものであり、多くの読者に深い余韻を残します。その短い言葉の中には、登場人物の人生観や世界観が凝縮されているといっても過言ではありません。
例えば、「白夜の中を歩いているようだ」という表現には、光も闇もない世界を生きる苦悩が込められています。明るさと安心を象徴する太陽が存在しない人生を歩むという感覚は、読者に強烈な印象を与えると同時に、作品に対する理解を一段と深めます。
この一文によって、物語全体に漂う不快感の正体がはっきりと浮かび上がるのです。
犠牲になった人々が浮かび上がる構図
白夜行では、主人公たちの行動によって数多くの人々が犠牲となります。直接的な被害だけでなく、精神的なダメージや人生の転落といった形で苦しむ人々が描かれています。
特に、江利子や典子、今枝、美佳といった人物たちは、それぞれの形で傷つき、読者の記憶に残る存在となっています。彼らは物語の中心にはいないものの、犠牲者として物語の深層を形づくっているのです。
この構図を通じて、作品が問いかけているのは「加害者の物語ではなく、巻き込まれた人々の苦しみ」ではないかという視点です。
心理描写の不在が生む不穏な余白
白夜行では、主人公である亮司と雪穂の心理描写が意図的に省略されています。2人の視点から語られる場面はほとんどなく、読者は常に外側から彼らの行動を観察することになります。
この手法によって、読者は彼らの真意を読み解こうとする一方で、断片的な情報から想像するしかないというもどかしさを抱えることになります。この「わからなさ」こそが、物語全体に不穏な余白をもたらしているのです。
心の奥にある動機が明かされないまま物語が進行していくことで、登場人物に対する理解が深まるどころか、距離感が増していく構造になっています。
闇を生き抜く2人の関係性の謎
亮司と雪穂の関係性は、物語を通して曖昧なまま保たれています。2人が会話を交わす描写すらなく、読者は彼らの接点を間接的な状況証拠から推測するしかありません。
その中で登場するアイテムや状況の一致が、彼らが確実に繋がっていることを示唆します。しかし、その関係がどのような感情に基づくものか、あるいは利害のみで結ばれているのかは明言されません。
この曖昧さが、2人の絆を神秘的で不気味なものに変え、読者に強烈な印象を残すのです。
白夜行をより楽しむための作品
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白夜行が気持ち悪いの真意まとめ
- 雪穂が感情を見せないことで不気味さが際立つ
- 亮司は常に裏で行動し姿を見せない
- 事件の被害者に対する描写が痛々しい
- 誰も救われない構成が読後の虚無感を生む
- 心理描写がないことで理解不能な人物像になる
- 光のない人生を象徴する最後の一文が印象的
- 主人公に感情移入できない構造が独特
- 推測だけで物語を追うストレスがある
- 正義が不在のまま物語が完結する構成
- ドラマ版とは異なり心理面が描かれない
- 被害者の視点で見ると怒りが込み上げる
- 曖昧な関係性が続くことで不安が増す
- 社会性を持たない犯罪が繰り返される
- 冷酷な計算と沈黙が不快感を助長する
- 読後に多くの問いを残す作品構造である